【道の駅でも野菜移動販売車?】運行状況と想定課題について

近年、地域の「買い物弱者」問題は全国的に深刻化しており、とくに高齢化が進むエリアでは、日々の食料品や生鮮品の確保すら困難になるケースが増えております。こうした課題に対し、道の駅が主体となって移動販売車を運行する取り組みが注目を集めています。本稿では、広島県「道の駅みはら神明の里」が導入した移動販売車「神明ちゃん」を例に、開始の背景、現在の運行状況、そして今後想定される課題について整理いたします。


■開始の背景:地域の「困りごと」から始まった取り組み

移動販売車を始めた最大の理由は、買い物手段を失った住民の方々を支援するためです。特に、店舗までの距離が遠い、交通手段がない、重い荷物を持てない、といった事情を抱える高齢者にとって、日常の買い物は大きな負担となっています。

道の駅みはら神明の里では、「地元の美味しいものを、必要としている方に直接届けたい」という思いから、2022年に移動販売車を導入しました。道の駅で人気の総菜や地元野菜、鮮魚、パンなどを“そのまま自宅近くで買える”仕組みを整えることで、地域住民の生活を支えることを目的としています。また、車両の愛称募集やオリジナルデザインの車体づくりを通じ、地域と一体となったプロジェクトとして立ち上げられた点も特徴です。


■現状の運行状況:地域福祉インフラとして定着

現在、移動販売車「神明ちゃん」は1台。三原市内の複数エリアを週1~2日巡回し、約200品目の生鮮品・総菜・日用品を販売しています。「店頭価格に+20円」の価格設定で展開。道の駅の人気商品である惣菜や刺身、地元農家の野菜、八天堂のクリームパンなど、多様な品揃えが支持の理由となっています。

運行ルートは曜日ごとに固定され、須波・幸崎・港町・西野エリアなどを決まった時間帯で巡回しています。市や社会福祉協議会が発行する「食の資源マップ」にも掲載されており、地域の買い物支援サービスの一つとして認知が広がってきました。近隣の高齢者を中心に、「自宅の近くまで来てくれるので助かる」「新鮮な刺身や弁当を買えるのが嬉しい」といった声も寄せられています。

また、地域イベントへ出店する機会も増えており、移動販売車が“地域を巡る小さなアンテナショップ”として機能し始めています。運営側でも事業のブラッシュアップを掲げており、地域に根づくサービスとして今後も継続していく意欲が示されています。


■今後想定される課題:採算性・人材・競合環境が焦点に

一方で、移動販売車の運営にはいくつかの課題も見えてきます。

①採算確保の難しさ
移動販売は少量多品種のため在庫管理が難しく、ロスが出やすい特徴があります。生鮮品を中心に扱う以上、鮮度管理とコストの両立は常に課題となります。とくに「店頭価格+20円」という手軽な価格設定は住民にとっては魅力ですが、事業としての収益確保には工夫が求められます。開始当初は「店頭価格+10円」だったそうです。

②ドライバー・運営人材の確保
運転と接客を同時に担えるスタッフは貴重であり、長期安定的な確保には課題が残ります。地域の高齢化や運輸系人材不足を考えると、今後の運行体制の維持には計画的な人材戦略が欠かせません。半面、マンパワーで運営しているので、誰かが欠けても回らない状態になる危険をはらんでいる。

③他移動スーパーとのすみ分け
同地域には他社の移動スーパーも複数走っており、ルートや品揃えが重なる可能性があります。特に「神明ちゃん」の事業モデルとなった「とくしまる」は生鮮商品積み込み固定客を抱えており、ライバルの位置付けで在ろう。今後道の駅としての“強み”を明確にし、差別化することが重要となっていきます。

④デジタル活用・見守り機能の期待
高齢者の生活支援としての役割が強まる中、見守り的な機能や、予約・取り置き、キャッシュレスなど、「サービスの質」を高める仕組みが求められます。ただし、対応範囲をどこまで担うかの線引きは慎重に検討すべき点です。


■まとめ:道の駅の可能性を広げる「移動する売り場」

移動販売車の取り組みは、単なる販売手段の拡張に留まらず、道の駅が地域の生活を支え、つながりを生む“移動型コミュニティ拠点”へと役割を広げる挑戦でもあります。今後は、採算性やオペレーションの最適化、地域連携の強化を図りながら、持続可能なモデルとして磨いていくことが求められるでしょう。

道の駅が持つ魅力を地域の隅々まで届けるこの取り組みが、今後どのように進化していくのか。移動販売車は、地域の未来を支える新たな柱として、ますます重要な存在になりつつあります。

産直販売プロデューサー 沼澤裕

産直販売プロデューサー 沼澤裕

株式会社コストSP総研 代表

産直販売が好き過ぎて仕事を代えた宮城県の男性/産直コンサル実績15年延べ220件以上/始めたきっかけは、元々地場野菜やローカル商品が大好きで全国の道の駅、食品スーパーに立ち寄るのが趣味でした。その「見て聞いて食べてきた」体験談を小売業社長に話すうちに「うちでもやりたい」「手伝って欲しい」となり、産直売場の改善、新規開設等が主力業務となりました/産直は立地・規模に関わらず、大手に対抗出来る数少ない集客策と確信しています!

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